出典:パラドックス定数 https://pdx-c.com/
おすすめ度:☆☆☆☆✬
公演期間:2023/03/17(金)~2023/03/26(日)
劇場:シアター風姿花伝
脚本・演出:野木萌葱
出演:植村宏司、西原誠吾、井内勇希、小野ゆたか
あらすじ
暗い。寒い。腹が減った。
出典:パラドックス定数 https://pdx-c.com/
このままでは死ぬ。必ず死ぬ。
生きる為にはどうすればいい。
金も力も何もない。
俺たちにあるのは、
血肉を分けた兄弟だけだ。
よく考えろ。
俺たちは本気で、
そう思っていたのか?
作品の感想
あくまでも個人の感想、若干ネタバレを含むため閲覧注意
演出・脚本:☆☆☆☆★
物語が進むうちにこれは最終的にウクライナ戦争に絡んでくるのかと気付かされる構成。劇中四兄弟が物語のタイミングで国であったり、歴史上の人物であったりを表しているようになっている。当初は、四兄弟が固定化された人物なのかと思って観ていたのに、ある場面では人そのものだが、あるシーンではこの関係性は国だよな、となって、今は何が投影されているキャラクターなのだろうか?と考えをめぐらしながら観ていて楽しめた。ラストは直接ウクライナ戦争には繋がらなかったが、それを予感させるシーンとなっている。
自分的には、四兄弟の3つのパターンの関係性までは理解できたような気が勝手にしている。
一つ目は、ソビエト社会主義共和国連邦(以下ソ連)の最初の四共和国であるロシア、ウクライナ、ザカフカース、ベラルーシで、帝政ロシアから長男ベラルーシ、次男ロシア、三男ザカフカース、四男ウクライナ、と予想。次男ロシア、四男ウクライナは確定で、三男がザカフカースだと思ったのは、ザカフカースの構成国であるジョージア(グルジア)が金属精錬の発祥地の一つと言われているから鍛冶屋なのかなと。
二つ目は、ソ連の歴代指導者で、長男レーニン、次男スターリン、三男フルシチョフ、四男ゴルバチョフだと思われる。長男、次男は間違いないのだが、三男・四男は微妙かも、ブレジネフの方が長いのだけど、三男のストーリーU-2撃墜事件を思わせる描写があり、四男でソ連崩壊を思わせる描写があるので、多分これ。ま、スターリンはジョージア出身なのだが、そこまできれいにはピースはハマらない。
三つ目が的外れかもしれないが、長男ドイツ、次男ロシア、三男ポーランド、四男ウクライナ。ドイツは、カール・マルクスの出身地であり、東西分断されていたのがソ連崩壊で完全に資本主義国家になっている点から終盤の長男の振舞から推察。次男ロシアと四男ウクライナもウクライナ戦争につながりそうな表現があり人物描写的にもそうであろう。ここでも三男が難しいのだが、ロシアと対立している、EU加盟を匂わせている、ドイツ→ポーランド→ウクライナ→ロシアで地続きになる、ワルシャワ条約機構がちょうどフルシチョフ時代なので三男と噛み合うところから、ポーランドと予測。
と、久々に知的なゲーム感覚を以て観劇。
俳優:☆☆☆☆☆
所属劇団員だけの公演で、植村宏司、西原誠吾、井内勇希、小野ゆたか、四者四様に素晴らしい。
西原誠吾
やはり声が素晴らしく、暴力的で威圧的ながら格好良い色気のあるスターリンでありロシアだった。
小野ゆたか
厳つい容姿とのギャップでちょっとコミカルなレーニンが似合ってた。銅像ポーズと春だもんブラザース兄には笑わせてもらった。
井内勇希
4人の中で唯一ちょっと外側に居る感じがどうしてもポーランドを想起させる春だもんブラザーズ弟。この”春”は、”プラハの春”なんだろうな。チェコだけど。
植村宏司
末っ子ゴルバチョフであり、ずっとウクライナだった四男は物語の中で最後武器を持たず(核放棄)に次男を見ているという選択肢をとるところがウクライナ戦争につながる演技であのシーンの空気感が印象的。
まとめ
安定のパラドックス定数。重い題材でも大人の知的好奇心を突く着想で楽しめた。
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