【演劇観てきた感想】JACROW『パブリック・リレーションズ』

4.0
演劇

JACROW『パブリック・リレーションズ』フライヤー

出典:JACROW  公式サイト https://www.jacrow.com/

おすすめ度:☆☆☆☆★(4/5)
劇場:雑遊
公演期間:2021/12/21 (火) ~ 2021/12/26 (日)
脚本・演出:中村ノブアキ
出演:
Aキャスト:芦原健介、江口逢、狩野和馬、小平伸一郎、佐藤貴也、福田真夕、宮越麻里杏、谷仲恵輔
Bキャスト:伊藤安那、江口逢、江刺家伸雄、近江谷太朗、狩野和馬、福圓美里、宮崎隼人、谷仲恵輔

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あらすじ

広告代理店やメーカー広報部を退職して集まった5人がPR会社を起業、100人以上の社員、100憶以上の売上という大きな夢を掲げ船出する。しかし、経営的になかなかうまくいかない中、追い打ちをかける出来事が起こる。決まっていたビジネスがとん挫したのだ。途方に暮れるCEO富野を前に、なんとかすると息巻く久美子と翠。ふたりは富野の元カノであり、今カノだった。そして久美子はそのビジネスを再び決めて帰ってくるのだが・・・

出典:JACROW  公式サイト https://www.jacrow.com/

話の流れ的には上記のとおりだが、この作品の面白さはここじゃない気がする。

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作品の感想

注意

あくまでも個人の感想。以下ネタバレ全開のため閲覧注意

脚本・演出:☆☆☆★★

初演は超えていない

Aキャストを観たが正直なところ初演を超えてないのが残念。

初演はとにかく寺十吾演じる衿川Pが恐ろしいのだが、谷仲恵輔だとややいい人感が勝るのが勿体ない。また、記憶頼りになるが、初演はもっと凄まじいパワハラとセクハラの描写があったと思う。時代を反映してか(令和にアレをやったら大問題なのだろう)表現がマイルドになってしまって当時の描写がドンピシャな世代としては物足りない。

説明的な場転をやめて(確か初演はいろんなところから看板が出てきた)俳優の演技だけできっちり場転を示しているのはよかった。舞台のど真ん中に鎮座している不等辺多角形なテーブルが崩壊していく組織を暗示しているのかいい味出していた。

人間関係が複雑なのにがっちりハマっている

たった8人の登場人物にどんだけ複雑な人間関係詰め込んでるんだ、という感じだが良くまとまっているんは流石。

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富野と女性陣

庄内は出来ているが、小峯は富野の元カノ(元メーカ広報ということはクライアント?)。で、その小峯は会社のために衿川と寝ちゃう。庄内は、女を使った小峯を前時代的だと詰るも、そもそも富野は仕事のために小峯と付き合っていた(男を使っていた)とも疑えるため、観ている方からすればそんな微妙な人間関係の人材を集めて起業なんかするなよ、っていう状態。

富野と男性陣

江渡は富野を尊敬して追従。古元は富野を裏切って佐久を使って競合への寝返りを目指す。男性の方も富野を挟んで対照的なのだが、二人とも劇中では全然成果が出ていないのは一緒。一般サラーリーマン視点からすると”どっちもどっち”状態。

東京テレビ

衿川は、小峯と寝るが、常に自分の番組が全ての人。絶対権力者。佐久は圧倒的な衿川の権力の前に、古元と組んでリベートを取ろうとする小役人。ここまではザッツ・昭和な感じ。
榛葉は、衿川からは無能扱い。佐久からは便利使いされておりドラマ班出身で戻りたがっていたが、
ラスト鬼の衿川に褒められて情報番組に残ることを決断。ギャップ萌えなのかやりがい搾取なのかわからないが、そういう若さ感は、初演ではあまり感じなかったから令和を反映しているのかも。

たった3人で昭和からある古い組織の縮図に仕上がっているのがいい。

俳優:☆☆☆☆★

狩野和馬

経営が徐々に苦しくなってきて物語の冒頭にあった自信や夢への希望が崩れていく焦燥が良く伝わってくる。切羽詰まるとああいう感じになりがち。典型的な部下(古元)への”詰め”がサラリーマンあるあるで刺さる。役によって全然違う人に見える。あれだけドハマりしていた田中角栄感全然ない。

谷仲恵輔

どうしても初演の寺十吾と比較してしまうのが申し訳ないが、人の良さが滲み出ちゃうのだろうか。 観ていないが、Bチームでの古元の方が合う気がする。とはいえ、企画の面白さが全て、というくだりは谷仲恵輔の方が寺十吾よりも沁みる気がする。

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まとめ

少ない登場人物で組織が崩壊していく様を濃厚に描き切る名作だが、初演のインパクトは超えていない印象。当然、初見の方にはおすすめ出来るし、小劇場観劇が初めての方にもおすすめできる。2022年年初7日までアーカイブ配信しているのでご興味があれば是非。

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