【演劇観てきた感想】露と枕『雨のかんむり』

4.0
アイキャッチ画像 演劇

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出典:露と枕 https://tsuyu-makura.amebaownd.com/

おすすめ度:☆☆☆☆★
公演期間:2022/11/09(水)~2022/11/13(日)
劇場:シアター風姿花伝
脚本・演出:井上瑠菜
出演:奥泉、藤本康平、小林桃香、板場充樹、齊藤由佳、沈ゆうこ、村上愛梨、幡美優、榊原あみ

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あらすじ

―それは、空からの賜りもの。

空から石の雨が降ってきた。
私たちの生活はひっくり返り、
今まで以上に面倒なことが増えたけど、
長い目で見たら、何にも変わっていないのかもしれない。
落とした財布を拾ってもらえば優しい気持ちになるし、
隣人とのテンションの差には苛立つものだ。

ただ、良くも悪くも私たちは、
「どうして私たちばっかり」と嘆くことを、許されてしまった。

露と枕はじめての番外公演は、小さな隕石の雨が降ってきた山麓の住民たちの、
“生活”と“加害”の連作短編集。

出典:露と枕 https://tsuyu-makura.amebaownd.com/
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作品の感想

注意

あくまでも個人の感想、若干ネタバレを含むため閲覧注意

演出・脚本:☆☆☆☆★

物語は、『霾(つちぐもり)』、『霖(ながあめ)』、『霤(あまだれ)』の連作短篇として綴られており、舞台設定が非常に巧い。隕石が雨のように降り注ぎ被災地となった街の1年間を時系列を逆に並べて、1年後(霾)、半年後(霖)、3日後(霤)と遡っていく。

大災害ではあるのだが、その悲惨な部分を描かずに、そこにある”生活”の中の”加害”を三者三様のテイストと切り口で描いている。何作も観ている訳ではないが、徐々に露と枕っぽくなっていく感じがするのも楽しめる。

それぞれの作品の中心に劇団員である、奥泉、小林桃香、村上愛梨を配してのキャスティングも絶妙だった。

『霾(つちぐもり)』

共に復興作業員である猿飼(奥泉)と牛尾(藤本康平)のお話。猿飼はド天然の承認欲求の塊みたいな愛されたいキャラで、牛尾は意識高い系ボランティアの極みみたいなキャラ。どちらも、イタくてウザい。

物語の設定を観客に沁み込ませるためか説明的なセリフも多いのだが、その表現がかなりぶっ飛んでいて、露と枕ってこんな演出するんだっけ?奥泉ってこういう俳優だったっけ?という感じになるが、慣れてくると、なるほど番外公演だからだな、と納得させられる。

『霖(ながあめ)』

一番テンポが出てて、コントっぽい仕上がりになっている、被災した街のとある自治会のお話。

自治会の取りまとめ役である柿原(小林桃香)と年寄り連中とのつなぎ役である梅野(沈ゆうこ)が、絶妙に回しと裏回しを入れ替えながら話を展開していき、桑田(齊藤由佳)と栗崎(板場充樹)との対立を煽っていく構図が面白い。

非常にポップで軽い展開ながら、被災地支援の”加害”と被災地の”生活”が確り織り込まれており、登場人物のエゴとか性格の悪さみたいなものもガッツリと表現しているのも良かった。

『霤(あまだれ)』

照明も抑えめにして、被災直後の不安定な雰囲気と”青い雨”を思わせる演出、そこで展開される俳優陣のセリフから伝わる”優しさ”が、いかにも露と枕っぽく感じる避難所のとある姉妹のお話。

姉の福江(幡美優)は、クールな印象を与える避難所がある中学の理科教諭、妹の小牧(榊原あみ)は、天然キャラで実家のクリーニング屋のお手伝いをしており、自称避難所の受付嬢。性格が全く違うようでいて、実は似ている二人の様子をジャーナリスト志望の鶴橋(村上愛梨)を交えて話は展開していく。

何も考えていないようでいて肝が据わっている小牧と、色々と考えているが故に不安が募っていく福江の対比と立場の入れ替わりや、小牧の挨拶に関するとらえ方などが伏線として回収されるラストなど、構成力が光る作品。

俳優:☆☆☆☆★

奥泉

こういう演技もできるのねというのが率直な印象。ファンの方は、充分に満足されたのではないだろうか。個人的には、影や裏が全くない感じなのは、新鮮ではあるものの、奥泉には合わないような気もする。

小林桃香

凄く巧いのだと思う。演じる役によって印象が全然違うので、こういう俳優だという部分がまだ固まらない。もっと観てみたいと思わせる何かを感じる俳優。

沈ゆうこ

客演として呼ばれた理由が即分かるキャスティング。ガヤというか、チャチャを入れるタイミングとトーンが絶妙過ぎ。自分のエゴで夏祭りをやりたいだけ、とか、裏の意図アリアリな感じもハマっていた。

榊原あみ

途中交代での出演と聞いていたが、まるで当て書されているのではないかという程の天真爛漫な愛され妹キャラが印象的。

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まとめ

今回は、短篇3連作だったが、この設定は何度でも使えるのではないだろうか、井上瑠菜の一大発明に感じる。また、この設定を使って違う構成の作品も期待したい。

露と枕の来年4月の本公演にも期待大

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出典:露と枕 https://tsuyu-makura.amebaownd.com/

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