出典:劇団競泳水着 公式ページ http://k-mizugi.com/10graydaughters/
おすすめ度:☆☆☆★★
劇場:2022/04/21 (木) ~ 2022/04/29 (金)
脚本・演出:上野友之
出演:江益凛、小川夏鈴、加茂井彩音、小角まや、佐藤睦、橘花梨、鄭玲美、都倉有加、橋爪未萠里、成瀬志帆、松尾太稀、ザンヨウコ
あらすじ
その館にはたくさんの女がいた。
女しかいなかった。一家を取り仕切る母。
実の両親を亡くし、母の養女となった娘たち。
娘が産んだ孫娘。やがて母は出逢いを得て、結婚を宣言し、
迎えた両家顔合わせの祝宴。
やってきたのは、連れ子の娘たち。こうして十人の「娘」が揃った時、
不可解な窃盗事件が発生し、
謎の死体も発見される。「犯人」の目的とは……?
活動再開後一年、劇団競泳水着が新たにお届けしますのは、
出典:劇団競泳水着 公式ページ http://k-mizugi.com/10graydaughters/
二つの家族の秘密がぶつかり合い、十人の娘の思惑が錯綜する、
世にも可笑しなミステリー。
作品の感想
あくまでも個人の感想。ネタバレありのため閲覧注意。【今回は特に核心のネタバレあり】
演出・脚本:☆☆★★★
冒頭からいきなりモノローグ連発で家族の物語を延々と綴る展開に非常にストレスがたまる。宣伝で既にミステリーを謳っており、あらすじの知識も与えられているのにミステリーパートに全く入らない。もうあと5分でも続いていたら席蹴っていたかもしれないレベル。こういう場合、謎解きと共に次第に過去が明らかになるなどの王道展開にしてもらわないと観客としてついていけない。”こと”が起こるまでが冗長。2時間サスペンスで早々に人死にが出る理由が良く分かる。
物語としては、夭折(というほどでもないが)した姉の5人の娘を義理の兄の死をきっかけに引き取って育てていた景子(ザンヨウコ)が突然熟年結婚を決意し、既に独立していた娘たちとお相手の連れ子が鈴木家に集まって顔合わせをすることになる。鈴木家には先に娘たちだけが戻り景子夫妻を待つことになり、折角なので先に乾杯を、とシャンパンを交わした直後に全員が昏倒…数時間後目覚めると全員金品を盗まれていることが発覚、そこにやっと景子が帰ってくる。そして、地下室に先に戻ったはずの夫の死体が…
なのだが、ここまでが異様に長い。ここからヒネリは利かせているものの、更にこの後の展開が強引。
【こっから完全ネタバレ】
実は、この一件は窃盗癖があり問題を起こして失踪した次女にい奈(小角まや)が仕組んだもので、全てが狂言。景子と田中家の長女を名乗っていた椿(橋爪未萠里)が共犯で椿以外の田中家は雇われた家族代行業者たち。その目的は、失踪する際に必ず戻ると一番かわいがっていた五女の乃蒼(橘花梨)と約束を交わしながら病魔に冒され死を覚悟したにい奈が、乃蒼へに発したメッセージであり、自分はまだ生きていると思わせるため。
しかも、更に情報が乗っかっていて、家族代行業者の一人で三女のモモ(江益凛)は、実は景子の義理の兄(実は死んでおらず失踪していた)の娘であり死んだはずの5人の娘たちの異母妹だった。という情報過多。観客がこの情報を捌き切れる構成になっていない。少なくとも自分には無理だった。
作りとしては映画『カメラを止めるな』に似ていて、ダラダラと前半で”完成部分”を見せた後に、種明かしをして一気にバックステージを展開させて伏線回収していく感じだが、ここに”華麗な”とか”鮮やかな”という形容が付けられないのが残念。
やはり競泳水着は、大人の恋愛群像劇の方が好みに合うかな。
俳優:☆☆☆☆★
小角まや
諸々展開に問題を感じつつも、ラストは俳優小角まやの個の力で突破された感がある。物語は別にして、にい奈の乃蒼に対する愛情がグッと伝わってくる。死を前にした諦観みたいなものも感じてしまう。プライベートでお母さんになられて、この辺りの深みが実体験と結びつくのだろうか。際立って良かった。
橘花梨
とてもキャラにハマっていた。違う役柄も観たことがあり、こういうキャラ一辺倒ではないことは知っているが、こういうキャラが似合うのは確か。ラストの一言「嘘つき」で、本作に対する不満の何割かは軽減されるほどの癒しがあった。
江益凛
展開的にひとつのステージで同じ演技を違う意味付けで2回行うので結構難役だったと思われる。しかも、実は異母妹という特殊設定まで背負って敢えて”下手な演技”をするというのもテクニックいる筈。真面目でいつも必死、というキャラが合う。実は年上だが姪の設定のワカバ(鄭玲美)をチラチラ見ながらの演技は良かった。
まとめ
事前にあらすじなどの一切の情報を入れずに観ればそれなりに大どんでん返し感が感じられるが、ミステリーだと思って観てしまうと結構厳しい。
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