【演劇観てきた感想】日本のラジオ『画廊にて-他3篇-』

4.0
アイキャッチ画像 演劇

フライヤー画像

出典:日本のラジオ 公式ページ https://razio.jp/free/garounite

おすすめ度:☆☆☆☆★
劇場:新宿眼科画廊
公演期間:2022/04/22 (金) ~ 2022/04/26 (火)
脚本・演出:屋代秀樹
出演:安東信助、沈ゆうこ、浦田すみれ、小野カズマ、川上献心、土橋銘菓

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あらすじ

我々人類は、これはもう必然的に、
未来に向けて前進しているのであります。
それはつまるところ、どう理屈をこねようと、
後戻りはできないということです。

「画廊にて」
「投票所にて」
「区役所にて」
「阿佐ヶ谷にて」

前進し過ぎて終末ギリギリの世界と、
そこまでの通過点に生きる人たちの、
4本の短いお話。

出典:日本のラジオ 公式ページ https://razio.jp/free/garounite
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作品の感想

注意

あくまでも個人の感想。ネタバレありのため閲覧注意

演出・脚本:☆☆☆☆★

世界観が独特で、各篇とも冒頭のちょっとしたセリフのやり取りで即座に異世界(デストピア)へ連れていかれる。細かい説明セリフなくとも世界がどんな状況になっているのか透けて見えるやり取りが秀逸。もっと深堀したい人は劇場で配布されているA2ポスター版当日パンフレットに架空の年表があり完全にマニア向けの荒唐無稽な近未来を楽しむことが出来る。(既に全ステージ売り止めなのが残念)

画廊にて

新宿眼科画廊をそのまま設定として使ってのオープニング。画廊に一人の男(川上献心)が佇んでいる。そこにとある女性(浦田すみれ)が訪れて、、、という出だしなのだが、新宿眼科画廊そのものがインスタレーションで男は作品の一部。訪れてきたのはAIに殺された幽霊で、という設定を落とし込んだところでAI(土橋銘菓)が登場してきて。。。

日本のラジオらしいセリフ回しなのだが、特にカレーライスのくだりは面白かった。”二つの名詞が連続して登場すると本質を表しているのは後の名詞”論で、いろいろ例示されて納得しつつあるところにカレーライスが出てきて”本質はライスですね”は笑った。そのあと更にソースとか出てきてグダグダになるのも良かった。

あと、AI(個人的には、それはAIではなくロボットだろうとツッコミを心の中で入れていたが)を演じている土橋銘菓のマイムが面白い。人間を鉄パイプで殴り殺すほどの出力があるロボットなのに家庭用コンセントで充電できるらしく体からコード引っ張ってつなげるのだが、充電後のコード回収が昭和家電(特に掃除機についている)のコード自動巻取りで、ボタン押したら最後にプラグが跳ねてびっくり、というのがプラグ見えるほど良く出来ていて必見。

投票所にて

とある投票所に旅人の男(安東信助)が訪れてくる。男の出身地には、投票(選挙)という制度がなくクイズに勝った人間が政治家になるため、噂の”投票”というものに興味津々。選挙管理委員(浦田すみれ)は、そんな男に選挙権がなくても投票を、と誘惑してくるのだが、そこに候補者の一人(小野カズマ)が現れて。。。

妙に艶を出してくる浦田すみれとサイコパスな小野カズマと安東信助の絡みが不思議な雰囲気を醸し出している。投票箱の中の虫が気になる。

ちなみに舞台は練馬区らしい。

区役所にて

とある区役所の待合所。隣の市に住む非区民(土橋銘菓)が、区役所を訪れる。待合所には職員と思われる区民(安東信助)がおり、非区民は市区境の橋にある土嚢についてのあるお願い事をしようとするのだが、実は区民は職員ではなくただ暇つぶしに区役所に来ているだけだった。そこに本当の職員(沈ゆうこ)が現れて。。。

沈ゆうこの融通が利くんだか利かないんだか分からない区役所職員と何を考えているのか分からない安東信助の雰囲気と、普通なんだけど”ど社畜”な土橋銘菓のコラボがとらえどころのない日本のラジオの妖しさを作っていて、個人的には一番好きな作品だった。橋が落とされた後、非区民はどうなってしまうのだろうか。

ちなみに舞台は江戸川区役所で非区民は千葉の人らしい。

阿佐ヶ谷にて

阿佐ヶ谷のとある交差点でぼーっとしている男(現代人:小野カズマ)の前に突然未来人(川上献心)が現れる。未来人は、意味深な言葉を残して立ち去るが、すぐに彼を追う時空警察(沈ゆうこ)が現れて。。。というタイムリープもの。

現代人の前に、何世代もの未来人と時空警察が入り乱れて順次タイムリープのお約束をぶち壊して突き進んでいくのだが、現代人も観ている方もよく分かんなくなってくるという展開。

ちなみにこの後阿佐ヶ谷事変が起こって杉並区が滅亡するらしい。

俳優:☆☆☆☆★

土橋銘菓

久々に板の上の姿を観たのだが、各段に雰囲気が大人になっていた。思えば2年ぶり(『卒業式、実行』以来)なので20代前半の俳優の2年っていうのは凄いなと。社会人になったこともあるのかも。

沈ゆうこ

こちらも『カケコミウッタエ』以来3年ぶり。今作では区役所職員でヤバいぐらい白目剥いてたり、時空警察で適度にサボったりと独特な存在感は健在。昔あったなんとなく危い・脆い雰囲気が良い意味で薄れてきている感じがした。

川上献心

もうずっと色々なところでお観かけする俳優さん。座組にいると安心で、なんとなく作品全体のクオリティが保証されているような気になる。

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まとめ

独特な世界観を数名の演者でコンパクトにまとめた短篇4本。満席売り止めにつき追加で動画配信するとのこと。この作品は配信でも充分に楽しめそう。

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