【演劇観てきた感想】五反田団『愛に関するいくつかの断片』

3.5
アイキャッチ画像 演劇

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出典:五反田団 公式サイト https://ainikannsuru2022.studio.site/

おすすめ度:☆☆☆✬★
劇場:アトリエヘリコプター
公演期間:2022/04/25 (月) ~ 2022/05/05 (木)
脚本・演出:前田司郎
演出:浅井浩介、岩瀬亮、鮎川桃果、西出結、宮部純子、柳英里紗

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あらすじ

【公演中止前】
愛が失踪した。死んだと言われている。殺されたとも。一体誰が愛を殺したのか。愛は存在したのか。女たちはくだらないことを話し、男たちはくだらない。大抵のことは笑いごとになって、泡みたいに消えていく。残ったのは染み。

あらすじをここに書いてしまうと、一行くらいになってしまうので書きません。すじはあんまり重要ではないのです。

【コロナ後】
この状況が、まさかこんなにも続くとは。ちょうど二年前に中止になった芝居をもう一度企画したわけですが、この公演も平気で吹けば飛ぶように中止になる可能性があるわけで、それでもやりたいんだからやるしかないという、演劇に対する執着というか、もはや愛のようなものを自覚した日々でした。

この芝居は、誰も見たことがないし、よく判らないけど、みんながあると思っているような愛について書かれています。愛そのものを描写することは出来なくて、その周辺のもやもやしたものをクロッキーみたいに、ささっと速写して、重ねて、光に透かしたらなんとなく輪郭を捉えられるかもしれない。そんな風に考えて書きました。男女が話しているだけです。でも、二年前に書いて、今年に入ってまたなおして、普通の倍くらいの時間をかけました。だからなんだというわけではないですが、見てほしいです。コロナのことは一切出てきません。もう飽きましたので。

出典:五反田団 公式サイト https://ainikannsuru2022.studio.site/
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作品の感想

注意

あくまでも個人の感想。ネタバレありのため閲覧注意。【オチ書いてます】

演出・脚本:☆☆☆☆★

”巧い”という読後感ではあるのだが、個人的にはレトリックが勝ち過ぎている気がしないでもない。舞台装置は、概ねなんとなく4つに区切られた空間を俳優が時間軸と空間軸を跨ぐ(演出としては見えない境界線を物理的に飛び越える)ことで場転を表現しつつ進んでいく。この空間と時間をずらしたり重ねたりという、演劇的な表現を以ってラストへ導いていくのだが、ちょっと”あざとい”のと、流石にラストが読めちゃうというのがやや物足りない。意図としては「あらすじ」にある通り”愛”の輪郭を周囲の人物の会話で浮き上がらせいく行程そのもの。それぞれの会話が”巧い”の一言の会話劇。

【ここから激しくネタバレします】

物語は、演劇ではありがちなのだが登場人物全員の関係性が複雑に絡み合っている。軸となるのは加奈(鮎川桃果)と憲治(浅井浩介)の関係性。

冒頭、加奈が憲治と共通の友人である森田(岩瀬亮)に対して加奈が憲治の浮気を疑い探りを入れるシーンから始まる。森田は、加奈が憲治と付き合う前から加奈が好きと公言しており、加奈にいろいろとしゃべってしまう。憲治は”愛”という女性と浮気しているのだが、”愛”は加奈の友人の夏子(柳英里紗)とゼミの先輩後輩関係で加奈のバイト先である淳美(宮部純子)の旦那(大学教授で夏子と”愛”のゼミ担当教授)と不倫関係で悩んでいるところで憲治と出会う。結局、憲治は加奈との別れを選択し”愛”のもとへ。

”愛”は、教授との不倫関係を清算した結果、教授から激しい嫌がらせをSNSで受けて失踪してしまう。憲治は、居場所がなくなり森田の家に転がり込む。意外にもそこには夏子が居候しており、2人はいつの間にか出来ていた。憲治は森田の家で退廃的な生活をしている中で流れで夏子とも関係をもってしまう。そんな状況の中、憲治は田舎に戻り家業を継ぐことを決心し、なんと加奈とよりを戻すことに。夏子は、憲治との一件まで暴露して加奈を思いとどまらせようとするが逆に加奈との友人関係が破綻してしまう。

そんなドタバタがある中で、”愛”の友人を名乗る鈴木(西出結)という女が”愛”を探していると淳美のもとを訪れて、、、

というのが、時系列的には全体的な流れ(あくまでも個人として受け取ったもの。上演台本読んでおらず1回観ただけの記憶を整理)で、結局、鈴木=”愛”で、嫌がらせをしていたのは旦那の不倫に気づいた淳美というのがオチなのだが、ここまでもっていくまで後半ずっと鈴木≠”愛”で表現を繋いでいくのが本作の演劇的な試みとして面白かった。

ミステリ小説などではよくあるレトリックで、一人称で物語を紡いでいる話者本人が実は犯人。みたいな構造なのだが、演劇でもそういうレトリックが成立するんだなというのが印象的。

俳優:☆☆☆★★

浅井浩介

とてもクズな憲治を好演。別れのシーンとか、グダグダと加奈に詰められている様とか、本当にダメで良かった。

鮎川桃果

出てくる人間の関係性がドロドロすぎる中で一周回って普通の女性な加奈。憲治との別れのシーンで淳美と加奈に心情を吐露しながら再現しているシーンが印象的。

柳英里紗

登場人物の関係性のハブになっていて、なんとなくいい人感出ているが、実際はトラブルメーカーで薄っすらサイコパスな夏子が怖かった。

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まとめ

演劇的な表現の巧さを味わえる会話劇。ちょっとした”あざとさ”はあるけど、テンポよく楽しめる作品。でも、よくよく味わうとそこらじゅうの人間関係が破綻していて怖い話。

コメント

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