【演劇観てきた感想】あやめ十八番『雑種 小夜の月』

演劇

フライヤー画像

出典:あやめ十八番 http://ayame-no18.com/

おすすめ度:☆☆☆☆☆
公演期間:2024/08/10(土)~2024/08/18(日)
劇場:座・高円寺1
脚本・演出:堀越涼
出演:堀越涼、大森茉利子、金子侑加、中野亜美、秋葉陽司、井上啓子、内田靖子、梅澤裕介、小口ふみか、川田希、蓮見のりこ、福圓美里、松浦康太、山本周平、佐藤つむぎ、原川浩明、吉田能、池田海人、丸川敬之、中條日菜子

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あらすじ

私の家はお団子屋さんです。
返田神宮という、わりと大きな神宮の参道で『小堀屋』という名のお団子屋さんを営んでいます。
五人家族全員で、お団子を売って暮らしています。参拝にくる、観光客の皆さんに、お団子を売って暮らしています。
お父さん、お母さんが団子を作り、出来た団子を蜜(みつ)姉と白(ゆき)姉が丸め、私が外で売り子をします。
この辺りは、雑誌に載るような観光地ではないけれど、家族が食べていくには十分で、日々の天気に一喜一憂しながら五人、可愛く商いしています。

高校を卒業して、店を手伝い始めて、あっという間に八年が経ちました。
うちはのんびりした家ですが、八年もあれば、なんもかんも変わっていきます。
白姉は生まれて初めて、蜜姉は通算二度目のお嫁に行って、私の部屋は繰り上がりで、少し広くなりました。小堀家きっての暴れん坊だった白姉は、今じゃすっかりお母さんで、暴れん坊の称号は娘の水樹ちゃんが受け継ぎました。
五人で夕飯を囲むことは、今じゃあんまりないけれど、昼間はみんなでやいのやいの言いながら、変わらず商いしています。

普段は飲食店用の白衣ばっかり着ているけれど、今夜はみんなで久しぶりに黒を着なくちゃなりません。
“裏の小父(おん)ちゃん”の、お通夜にみんなで行くんです。

裏の小父ちゃんの家は、神宮の駐車場の裏の急な坂を上ってった先にあって、小父ちゃんはそこで十匹の猫と一緒に暮らしていました。
小父ちゃんは昔、神主さんをやっていたそうで、この辺りの人はみんな、困ったことがあると小父ちゃんに相談に行ったそうです。

小父ちゃんが亡くなった後、お母さんはすぐに猫の引き取り手に名乗りを上げました。
そういう人は他にも大勢居たらしく、お母さんはその中でも、わざわざ一番年寄りの、お腹のとこに腫瘍のある、お婆ちゃん猫を引き取りました。
お父さんが猫アレルギーなのに、何でウチが引き取るの?と聞くと、昔、お世話になったからって。

お母さんは、それから色々教えてくれました。
三十五年前、お父さんとお母さんが、駆け落ちをしたこと。二人を匿ってくれたのが、裏の小父ちゃんであったこと。
この猫はその頃から小父ちゃんの家に居て、今は化け猫で間違いないってこと。

『雑種 小夜の月』は、裏の小父ちゃんと化け猫と、お父さんお母さんの徒歩五分の駆け落ちのお話です。

小堀 綺(あや)

出典:あやめ十八番 http://ayame-no18.com/
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作品の感想

注意

あくまでも個人の感想、若干ネタバレを含むため閲覧注意

演出・脚本:☆☆☆☆☆

座・高円寺で初めての対面式の客席配置。ただでさえ横に長い座・高円寺の舞台が随分細長く見えるのだが、そこを逆手にとって上手と下手を上手く組み合わせながらの場転が効果的。巧みな場転で多くの登場人物の小さな物語が折り重なるように積み上げられていく。

一つ一つの物語は、そこまで特殊ではなくよくあるお話である。どちらの本家を残すのか嫁に入るのか婿に入るのかで駆け落ちまで発展してしまう話を中心に、妊活について議論する夫婦の話、出産を控える夫婦の話、小さい子供を抱えている夫婦の話、施設から子供を引き取って育てた一人親の話、認知症の母を施設に入れる話、都会から地方に移住してきた話、地方から都会に移住する話、などなど、奇をてらったような話ではないのだが、ずっと琴線に触れてくる。号泣するようなシーンはなく、ただずっと目に涙がたまっているような状態が100分ぐらい続く。堀越涼の素晴らしい構成と演出で、情感たっぷりの古き良き日本の伝統的な価値観と優しさが織り成す人間模様を体感できる素晴らしい2時間。そして最後の祭りのシーンでの締め括り。あれは生演奏じゃないと出てこない空気感で全てにおいて完璧だった。

俳優:☆☆☆☆☆

原川浩明

今作は彼なしでは語れない。困っている人を見捨てることが出来ない”裏のおんちゃん”伊能守を好演。特に”息子”である勘太郎(松浦康太)との絡みが素晴らしかった。そして、彼に限らず流石の花組芝居の皆さんが作品に与える安定感の素晴らしさよ。堀越涼と花組芝居の関係性がなければ実現しないキャスティングで、普通の小劇場劇団では成し得ない座組。

中野亜美

多くの登場人物の中で唯一の”部外者”である日下部美穂。拒絶されるわけでもなく、確り溶け込んでいるのが、何となくこの度の入座についての暗示的な部分があるのではないかと勘繰ってしまうほど。向日葵のような明るい笑顔が似合う演技をする俳優。超真面目で俳優業を選ばなくとも何でもそつなくこなせるタイプなのに演技の世界に魅入られてしまった感(個人の勝手な感想です)に惹かれる。

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まとめ

今後も年に一回の座・高円寺での公演となるのだろうか。本当はもっと演って欲しいところだが、あやめ十八番が夏祭りのようなイベントになりつつあると実感する作品だった。

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出典:あやめ十八番 http://ayame-no18.com/

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