出典:やみ・あがりシアター http://yamiagaritheater.jp/
おすすめ度:☆☆☆☆✬
公演期間:2023/09/07(木)~2023/09/10(日)
劇場:新宿シアタートップス
脚本・演出:笠浦静花
出演:青木絵璃、板場充樹、加藤睦望、加瀬澤拓未、川上献心、北原州真、笹井雄吾、佐野剛、さんなぎ、柴田和美、田久保柚香、チカナガチサト、波世側まる、端栞里、松本裕子、南大空
あらすじ
濫吹【らん‐すい】とは??
→実力のないものが、実力があるかのように見せかけること
(韓非子 内儲説より)笛の吹けない南郭が、
斉の国から逃げ出してから、約二千三百年。東京。会長が言う。
出典:やみ・あがりシアター http://yamiagaritheater.jp/
「(私は)PTA会長は、お飾りだと言うから、引き受けたのです」
それに答えて、
「流行病を避けて、会議を通信で行い、保護者の負担が減りました。その代わり、(PTAの皆が)見知った仲ではなくなりました。まだはっきりしたことではないのですが、私たちPTAの活動に、保護者でない者が混じっているのではないかという話があります。どうしますか」
「どうしていいか分からないが、私たちが逃げられるでしょうか(いや、逃げられるはずがない)。子どもがいるのですから」
作品の感想
あくまでも個人の感想、若干ネタバレを含むため閲覧注意
演出・脚本:☆☆☆☆☆
実は会場のシアタートップスが苦手。横幅に対して座席の奥行が広い、しかも傾斜が微妙で前の観客が目に入るし、奥行きのせいで後方席からだと俳優の表情がはっきり観えないほど舞台が遠い。この構造のため舞台を底上げしているのだが、それをやられると今度は前方席が見上げる形になり、兎に角観づらい印象の劇場。と言っても、やみ・あがりシアターが掛かるというのだから行かざるを得ない。
で、座席について吃驚。奈落に蹴込みがなくて丸見え(これで表現あっているのか?)で、俳優が行き来する様子を観せている。公演中も奈落の照明を落としていないので、客電が落ちると本当によく動きが観て取れる状態。なんでこんな形態にしているのか、というのは開幕して直ぐに分かる。
物語は、古代中国の思想家韓非子の故事”濫吹(濫竽充数)”をベースにした創作と現代のPTAの旗振り(登下校時の交通安全&見守り活動)で発生した問題を上手く絡めて展開されていくのだが、演出時に出演者全員がアカペラ合唱で効果音だったりBGMだったりを舞台上と奈落で歌っていて、俳優が舞台上に出ていなくても作品に参加している状態が維持されている。これが発明。演劇が総合芸術たる所以を思い出させてくれる演出で、非常に心動かされるものがある。久々に物語のスジじゃない演出の部分で感動した。
”濫吹”の南郭(竽の楽隊に居ながら竽が吹けない)を本歌取りして、旗振り当番のごとく旗振りをしているが実は子供はおらずPTAの人ではない斉藤さん(加藤睦望)のストーリーを展開していく着想も面白く、登場人物それぞれの正義があり、観客での受け止め方は違ってくる印象。子供の居ない身としては、追いついていけない感情の動きもあるのだが、斉藤さんと宗田さん(田久保柚香)の交流のシーンとかは印象に残っている。
俳優:☆☆☆☆★
加藤睦望
前回拝見した『すすめのだみだだん』とは雰囲気が全然違う(別の役なんだから当たり前だが)。凄く引き出しの多い俳優なのだなという印象で、色んな役柄を演じているところを観たいと思わせてくれる。
田久保柚香
最近ご縁が良くあるな、という印象。唐沢先生に暗に田舎者と誹られたと思って声を荒げるシーンが個人的には一番印象に残っている。斉藤さんと宗田さんの距離が徐々に詰まっていく感じが良かった。
川上献心
人柄も良く優しい保健室の唐沢先生なのだが、大人の事情がどうしても先に出てきてしまうもどかしさを観客に与えるのが巧い。斉藤さんに旗振りをさせまいとするところとか、宗田さんに意図しない嫌味を言ってしまうとか、ネガティブな意味での学校の先生っぽさを感じさせてくれるのがリアル。
まとめ
苦手な劇場でも作品が面白ければ大丈夫。笠浦静花の前説のゆるふわ感も良かった。やみ・あがりシアター生涯無料パスポートが欲しくなってしまうが、逆にこれから毎作品観に行った方が支援になる気がする。
出典:やみ・あがりシアター http://yamiagaritheater.jp/
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