【演劇観てきた感想】劇団チョコレートケーキ『帰還不能点』

3.5
アイキャッチ画像 演劇

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出典:劇団チョコレートケーキ http://www.geki-choco.com/

おすすめ度:☆☆☆✬★
期間:2022/08/17(水)~2022/09/04(日)
劇場:東京芸術劇場 シアターイースト
脚本:古川健
演出:日澤雄介
出演:岡本篤、西尾友樹、青木柳葉魚、東谷英人、粟野史浩、今里真、緒方晋、照井健仁、村上誠基、黒沢あすか

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あらすじ

1950年代、敗戦前の若手エリート官僚が久しぶりに集い久闊を叙す。やがて酒が進むうちに話は二人の故人に収斂する。
一人は首相近衛文麿。近衛を知る参加者が近衛を演じ、近衛の最大の失策、日中戦争長期化の経緯が語られる。
もう一人は外相松岡洋右。また別の一人が松岡を演じ、アメリカの警戒レベルを引き上げた三国同盟締結の経緯が語られる。

更に語られる「帰還不能点」南部仏印進駐。

大日本帝国を破滅させた文官たちの物語。

出典:劇団チョコレートケーキ http://www.geki-choco.com/
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作品の感想

見出し

あくまでも個人の感想、若干ネタバレを含むため閲覧注意

演出・脚本:☆☆☆★★

物語は、戦時中に実在した総力戦研究所(国家総力戦に関して、各官庁・陸海軍・民間などから選抜された若手エリートたちの総力戦体制に向けた教育と訓練を目的とした機関)の一期生たちが、終戦後に亡くなった同期の山崎の訃報に接し、同窓会がてらに山崎の妻が営む居酒屋に集まり当時を振り返るという流れ。

一般的に太平洋戦争は軍部の暴走によると思われがちであるが、その根本にある原因は文官である近衛文麿と松岡洋右のもう少しだけ成果を伸ばしたいという”欲”と軍人の戦わずして軍事力の衰退を招く訳にはいかないという防衛本能に対する”無知”が招いたものであるという歴史観をフィクション仕立てで描いている。

そして、最後に必ず負けると分かっていたのに何もすることが出来なかった自らを責め、病に蝕まれてもそれを放置して罪滅ぼしに闇市を回り人々に救いの手を差し伸べていた山崎とそんな山崎の気持ちに共感する岡田の苦悩が同期に共有されていく…

過去の出来事を劇中劇で代わる代わる演じることで、当時の戦局の節目、節目を観客に提示しつつ時間を進めていき、ついに日本は帰還不能点を突破して敗戦に向かっていくという方式で、今までに観た劇チョコとは違った趣の演出であった。

色々な役者が代わる代わる近衛を演じている様は、さながら稽古場でのクリエーションのような感じさえして新鮮ではあったものの、劇チョコのいつものような臨場感や、気持ちが引き込まれるような時代の”うねり”に欠ける感覚があったのが残念。

俳優:☆☆☆☆★

岡本篤 & 西尾友樹

劇団の新たな取り組みを支えるのはやはり劇団員だなという活躍

物語の軸を確りと押さえつつ、強力な客演陣を繋ぐ演技が素晴らしい

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まとめ

超実力派劇団チョコレートケーキの新たな試みが詰まっていた

初演を観逃しがちだが押さえておいて間違いない劇団

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