【演劇観てきた感想】悪い芝居『ラスト・ナイト・エンド・デイドリーム・モンスター』

3.0
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出典:悪い芝居 http://waruishibai.jp/

おすすめ度:☆☆☆★★
劇場:新宿シアタートップス
公演期間:2022/06/02(木)~2022/06/12(日)
脚本・演出:山崎彬
出演:多田直人、中西柚貴、今村美歩、潮みか、浅野康之、小日向雪、香月ハル、森谷菜緒子、長瀬貴博、畑中華香、ユガミノーマル、松本亮、植田順平、千綿勇平

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あらすじ

ある日、日野朝子は見知らぬ女性と喫茶店で話す父親の姿を見かける。その女性は父親に白い本を手渡すと突然泣き崩れた。帰り道、朝子は本屋で昼間の女性が父親に渡していた白い本を見つける。タイトルは『白昼夢の快物』。その本の著者は、20年前に日本中を震撼させたとある事件の犯人で、本には何故か自分の名前が書かれていた。朝子、当時一歳のころの事件である。

温森幼一郎はすべての記憶を失った状態で自殺の名所であるクモ膜ヶ原樹海で見つかった。森の中で見つけた自分のもののような気がしたスマートホン。直感的に打ち込んだパスワードが見事的中し、通話履歴に大量に残されていた「マイハニー」にリダイヤルする。やがて現れた「マイハニー」と新しい記憶を作ってゆきたいと幼一郎は思った。

過去作『ラスト・ナイト・エンド・ファースト・モーニング』と『快物』を下敷きに、両作の清濁全てを混ぜ合わせた新作として生まれ変わる『ラスト・ナイト・エンド・デイドリーム・モンスター』は、最後の騎士と白昼夢の快物による、めくるめく記憶をめぐる逡巡渇望悲喜劇シュンジュンカツボートラジコメディ

出典:悪い芝居 http://waruishibai.jp/
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作品の感想

注意

あくまでも個人の感想。ネタバレありのため閲覧注意。

演出・脚本:☆☆★★★

『罠々』以来5年ぶりの悪い芝居

今まで一番好きだったのは『メロメロたち』(初演の方)なのだが、相変わらず分かり難いのはよいとして、あの魂を掴んでくるような感覚を感じられなかったのが残念

率直な感想としては、物語の運び方が個人的に合わない…

勝手な理解(個人的なあらすじ)

物語は、個人的に受け取った内容を時系列に並び替えると以下のようなイメージ、上演台本買ってないので所々曖昧な部分や違うかもと感じているところも多々あり

全ては20年前の事件に
中学生の春山春(千綿勇平)が、無差別連続殺人を犯し、米染麦(今村美歩)の母と乾潤(多田直人)の妻を殺害するも未成年犯罪のため少年院送致となり、残された遺族は絶望の日々を送る

(下敷きとなるのは”神戸連続児童殺傷事件”。余談であるが悪い芝居主宰の山崎彬は、少年Aと同じ82年生まれである)

春山の社会復帰
8年後、少年院を退院した春山春は社会復帰を果たし名前を変えてある工場に勤務、そこで出会った貝原命(小日向雪)、道草芯(浅野康之)らとの出会いから、徐々に人間性と取り戻していく

春山と被害者遺族
春山を許さない麦と潤に新たな生活の場を探し当て彼との対話を望むも、実際に対面すると感情が爆発してしまい春山を絞殺(撲殺?)してしまう、潤は興奮する麦を一人家に帰し自身は樹海に春山を埋めに向かう

潤と春山
樹海で春山を埋めようとしていた潤は、目にした春山と貝原の仲睦まじい姿を思い出し、自分のやっていることは、春山の恋人を麦や自分のようにしてしまうことではないか?との恐怖から春山をそこに残し逃げだそうとする、そこに息を吹き返した(死んではいなかった)春山が自分を埋めるためだったスコップを手に追いすがり彼を殴りつけ(?)逃走する

潤の記憶喪失
春山に殴られた潤が意識を取り戻すと全ての記憶を失っていた、傍らにはスマートフォンがあり、直感的に入力したパスワードでロックが解除されるとそこには”マイハニー”との大量の通話履歴が…そして”マイハニー”から新たな着信が…

風と幼一郎との生活
”マイハニー”こと温森風(潮みか)と温森幼一郎(=乾潤:多田直人)は、8年前の出来事を経て現在は幸せな生活を送っているが、幼一郎は、高次脳機能障害を抱えてしまい時折ふとしたきっかけで過去の行動がフラッシュバックはするものの記憶が定着せずにいる

ある日、幼一郎はあることに気が付く、この家には自分の記憶がフラッシュバックされるものしかない、8年前の出来事以前に在ったものが存在しない、と…

このわだかまりに決着をつけるべく、幼一郎はTVの捜査番組に応募し自分自身の記憶を見つけてもらおうと考え、ディレクターの目覚衝太(松本亮)とカメラマンの芋鶴瞬二郎(長瀬貴博)の取材を受ける

手記『白昼夢の快物』
樹海での一件から更に8年後、春山は自らの事件を語った手記『白昼夢の快物』を発表、そこには自らの視点で事件を振り返りつつ、自身の中でのかけがえのない命や芯との大切な想いが綴られていた

朝子と潤
ある日、日野朝子(中西柚貴)は見知らぬ女性と喫茶店で話す父親・統一(植田順平)の姿を見かける

その女性(麦)は統一に白い本を手渡すと突然泣き崩れる(潤と自分は春山を殺していなかった、と)

この光景を不審に思った朝子が戸籍を調べると父と思っていた統一は実は祖父であること、自身は20年前の事件の被害者の娘であることを知る

更に、テレビでは行方不明であった本当の父・潤が自身の記憶を探していると出演すると直ぐにその素性が明らかとなり、二人は20年ぶりの再会を果たす

お互いに記憶にはない父と娘は…

なぜ合わないと感じたか

上記が受け取ったストーリーなのだが、実際の演出は時系列がバラバラで並行して語られている。そして、春山の事件と樹海での出来事を”ある起点”から両方とも”8年前”と表現することで時系列をよりあやふやにしてミスリードを誘っているように感じたのが合わなかった

ここを”巧い”と感じる方もいらっしゃる(というか、そういう人が大半なのだろう)と思うのだが、個人的には分かりづらく、ただただ”あざとい”と感じてしまった

これは悪い芝居にこういったレトリックを求めておらず、もっと魂を揺さぶるような表現を求めている自分の身勝手で我儘な欲求が満たされていないからの不満であり、この作品がつまらなかった訳ではない

事実、自分だけ客席で浮いてる…という感覚が凄まじく、多くの方が涙している気配を感じた

俳優:☆☆☆☆★

多田直人

説明不要に上手いと思う、とても達者で”いい人感”全開

何故か大沢たかおに観えた

中西柚貴

流石看板女優という感じで見事に主軸を務めていて、良く通る声で重い話を重くさせないのが印象的

森谷菜緒子

ストーリーには直接的な関係はないながらも中西柚貴とよいコンビネーションで、関係者ではない関係性で程よい距離感を保って朝子に寄り添う真琴を好演、最近は映像作品に軸足を移されているようで久々に観れた

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まとめ

個人的には合わなかったですが、決してつまらない作品ではないと思われ…

なぜなら本当に受け付けなかったらこんなに長々と感想書けない

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出典:悪い芝居 http://waruishibai.jp/

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