出典:JACROW https://www.jacrow.com/
おすすめ度:☆☆☆✬★
公演期間:2024/06/14(金)~2024/06/23(日)
劇場:新宿シアタートップス
脚本・演出:中村ノブアキ
出演:芦原健介、狩野和馬、小平伸一郎、佐藤貴也、谷仲恵輔、佃典彦、中野英樹、平塚直隆、星野卓誠
あらすじ
なぜ地面師に騙されたのか
誰もがそうくちをそろえる
だったら逆に言いたい
どうしても手に入れたいと
夢にまで見たものが
手に入ると知ったとき
あなたは冷静でいられますかと
恋とはそういうものじゃないかとこれは夢見る企業戦士たちの物語
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作品の感想
あくまでも個人の感想、若干ネタバレを含むため閲覧注意
演出・脚本:☆☆☆★★
JACROWお得意の企業モノである。が、コロナを経たからなのか、昔のような吐き気を催すような重苦しく濃密でソリッドな緊張感があまり感じられなかったのは残念。題材が積水ハウスの件なので、もっと辛辣で闇の深い表現になるかと思っていたのだが、作品は滑稽な表現が多く、茶化した感じに仕上がっている。また、劇中ちょいちょい本能寺の変になぞらえた描写があるのだが、あまりハマらない感じだった。
積水ハウスの地面師事件に端を発するクーデターは、個人的な受け取り方としては”事実は小説より奇なり”を地で行くほどにお粗末な小人物によるものであり、事実に即した形で演劇にすると”逆に”本作のように軽薄な感じに仕上がってしまう、ということについては新たな発見ではあった。劇中、地面師に騙された社長の明知一派によるクーデターがあっけない程簡単に成立してしまうのは、創作ゆえの矮小化とも思えてしまうが、実際に積水ハウスで和田会長(劇中では尾田会長)が阿部社長一派の多数派工作によって退陣したいきさつを踏襲しており、事実が創作を超えて喜劇的であるということは興味深い。
作品ではその在り得ないほどに軽薄なさまを表現したかったのかもしれないが、そこにある当時の日本のサラリーマンの厳しい縦社会の闇や意思決定のプロセスにある葛藤の重さみたいなものを期待をしてしまっていた自分がいる。令和の時代には馴染まないロスジェネが味わった平成の閉塞感というのは、既に”遠くなりにけり”という事なのかもしれないと、ちょっと寂しい気持ちになる。
俳優:☆☆☆☆★
小平伸一郎
全ての責任を被せられて退職勧奨されてしまうマンション事業本部・部長村井を好演。もっと組織の論理に翻弄されても良いのではないかとも感じたが、この作品でこの役を演じるとなれば小平伸一郎の一択であることは間違いない。色々と弱いところがありつつも最後の最後のところは絶対に譲らない強さがある役どころはハマる。
狩野和馬
マンション事業部の溝尾の対抗馬である戸建て事業部本部のエース森。尾田と一緒に権力闘争で負ける側なので森(蘭丸)という事なのだろう。そこは全然ハマらなかったが、おそらく積水ハウスの事件で社を離れた藤原元彦タカマツハウス株式会社社長をモデルにされているような気がしている。伝説の営業マンのオーラが良く出ていた。
芦原健介
本作品のキーマンであり、謎解きの”オチ”を担っている法務部長木下である。所々に不自然な言動があり引っかかるなと思っていたらラストの”オチ”に繋がっていた。冒頭とラストで意味合いが違うのに同じ演技をする演出が付いており、自然過ぎてもいけない、という演技を毎ステージこなしているかと思うと再現性の高さが凄い。
谷仲恵輔
本作の本当の意味での主人公である明知社長をコミカルに演じていた。もっともっと”小人物”であっても良いとも思ったが、とはいっても大企業の社長まで上り詰めた人物である。悪い意味で立場が人を変えてしまったのかも知れないな、と思いながら観ていた。特に佐藤貴也演じる斉藤専務を調略するくだりは”匹夫罪なし璧を懐いて罪あり”、”小人は同じて和せず”などと故事が頭をよぎってしまった。
まとめ
嘘か冗談のような話が日本のサラリーマン社会では発生しうることを思い出させてくれる作品
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