【演劇観てきた感想】アマヤドリ『牢獄の森』『うれしい悲鳴』

4.5
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出典:アマヤドリ https://amayadori.co.jp/

おすすめ度:☆☆☆☆✬
公演期間:2024/08/17(土)~2024/08/26(月)
劇場:吉祥寺シアター
脚本・演出:広田淳一
出演:
『牢獄の森』
倉田大輔、沼田星麻、相葉るか、徳倉マドカ、深海哲哉、宮川飛鳥、堤和悠樹、星野李奈、稲垣干城、さんなぎ
『うれしい悲鳴』
相葉りこ、宮崎雄真、大塚由祈子、西川康太郎、西本泰輔、瀬川聖、津田恭佑、成瀬志帆、月野環、夏アンナ、元山日菜子、宮本海、梶川七海、小町実乃梨、三尾周平、桜井木穂、チカナガチサト、荒川流、ザンヨウコ

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あらすじ

この夏、アマヤドリは、今年六月に穂の国とよはし芸術劇場PLATにて創作された新作会話劇『牢獄の森』と、旧劇団名「ひょっとこ乱舞」時代の最終作品となった代表作のひとつ『うれしい悲鳴』を同時上演いたします。

『牢獄の森』は、犯罪者予備軍として社会から半ば排除されてしまった人々が形成する近未来の「森」を舞台にして展開される、SF会話劇です。劇団員を中心にしたキャストで、近年のアマヤドリが得意とする解像度の高い会話劇の手法を使い、近未来の人々の倫理と欲望を丹念に描きだします。

『うれしい悲鳴』は、「感じすぎる女」と「痛覚の無い男」を中心に集団の狂気と悲恋の顛末を描く、アマヤドリ版ロミ・ジュリともいうべき作品です。若い客演陣を中心に、これぞアマヤドリの真骨頂! というムーヴメント豊かな舞台を、これでもかというぐらいダイナミックに上演いたします。

この企画はですね、要するにミュージシャンの方がよくやる、ベスト盤と新譜を二枚同時発売するような、そんな企画になっておりまして、アマヤドリなんか観たことないぜ、という方にも、ヘビーに毎公演ご覧頂いている方にも見逃せない公演となっております。

正直申しまして二本立てなんてえもんは、なかなか劇団の体力的にもしんどい部分があるんではございますが、かつてコロナ禍によって潰れちまった吉祥寺シアターでの本公演のリベンジということでね、はい。我々も死力を尽くして捲土重来を果たしてやろうと思っておりますので、どうぞ、見届けてやってくださいませ。真夏の吉祥寺に潜伏して、みなさんを待ち伏せしております。

アマヤドリ主宰 広田淳一

出典:アマヤドリ https://amayadori.co.jp/
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作品の感想

注意

あくまでも個人の感想、若干ネタバレを含むため閲覧注意

演出・脚本:☆☆☆☆★

『うれしい悲鳴』

アマヤドリでの再演を観ているのだが、格段に観客の気持ちに入ってくる演出になっていると感じる。ポストパフォーマンストークでも千代田氏が指摘していたが、再演時の1場の時代背景が逆に物語に入っていきづらくなっている。いきなりストーリーが始まり、そういう時代という事が暗黙の了解のもとに進行していく方が遥かにこの作品に合っている気がする。そういう”理不尽”を扱っているのだから。

冒頭から入っていけたため、再演の時には眺めていただけだった小学校卒業の回想シーンの”重み”が確りと心に残っていて、ラブレター代読からの”キスして殺して”が無茶苦茶ガツンと来た。

『牢獄の森』

最近のアマヤドリで主流の会話劇で結構まくし立てる激論劇であった。感情論的な部分もありながらも、その議論は非常にロジカルでリーズナブルなものであり、大半がアヤマドリの所属俳優が固めているからかセリフと感情の受け渡しも非常にスムーズで楽しめる論理構成だった。

取り扱っている世界観は、所謂アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』に近い感じだったが、個人的には”あのラスト”がやや合わない感じである。ラストまでほぼ破綻することなく進んでいたストーリー上の論理構成が一気に”辻褄が合わない”と感じる瞬間だった。広田淳一もポストパフォーマンストークで改変を悩んだという話をしていたが、何とか良いラストシーンを再構築して再演をして欲しいというのが個人的な希望である。

俳優:☆☆☆☆☆

相葉りこ

再演時にはあまり入ってこなかった斉木ミミの”論理”が、彼女が演じることによってスッと腹落ちした感じがした。特に小学校卒業の回想シーンのラスト、長台詞からのザンヨウコとのセリフと感情のやり取りの納得度の高さが素晴らしかった。あれがあってこその”キスして殺して”だったと思う。

西川康太郎

現時点での広田演出では、マキノは彼でなければいけないのだなと痛感した。本来人間が持っている”何か”が欠落している状態であるという事が非常に伝わってくる。”欠損した”のではなく”隙間ができた”感じがして、あの雰囲気を現時点では彼以上に出し得る俳優がいないのだろうと思った。俳優は引退と宣言していることもあり、今後余程のことがない限り俳優として舞台に上がらないであろうことが、本当に勿体ないと感じる。

チカナガチサト

何作かお芝居を拝見しているのだが、今作が現時点ではベストアクトではないだろうかと感じた。広田演出にめぐりあえた事が一番だろう。彼女をああいう役どころで使うというのが流石である。どうしても子供っぽい役をあてがわれるイメージであるが、うって変わって森近に抜擢するキャスティングが絶妙。

倉田大輔

流石としか言いようがない巧さがある。ラスト”妻”とは言ってくれないのだろうなと思いながらも、もしや言ってくれるのか?という間合いが真骨頂。

堤和悠樹

男性の中では唯一感情の起伏が大きく、キレやすいキャラなのだが、観てて本当にキレキャラ特有の”嫌な感じ”が出てて怖かった。言っていることは結構スジが通っているのに、感情のせているせいで伝わらない場面が何度もあり出色。

宮川飛鳥

見た目とは裏腹に異様な”怪しさ”が滲み出ている谷底が良かった。こんなに振り切ったキャラの芝居でも作品にアジャストしてくるバランス感覚が凄いと感じる。

相葉るか

今作では”つなぎ”に徹している感じで大きな見せ場があったわけではないのだが、確かな存在感とどうしても感じてしまう”艶”がある俳優である。双子だけあって声も妹(相葉りこ)とかなり似ているのだが、似て非なる独特な色気が魅力的。

さんなぎ

芝居巧者揃いのアマヤドリメンバーに囲まれての唯一の客演だったが素晴らしい演技だった。星野李奈との口論のシーンで滔々とまくし立てるところや、相手を煽ってくるチャチャ入れとか、巧妙過ぎて笑った。やみ・あがりシアターなどで拝見している演技とはまた違う味わいが出ていて、超のつく実力派俳優であると再認識。

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まとめ

なんとなくだが、アヤマドリって昔に比べて徐々に分かりやすくなってきている気がする。広田淳一が変わったのか、こちらが年を取って守備範囲が広がったのかが、ちょっと分からないのがやや不安。

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出典:アマヤドリ https://amayadori.co.jp/

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