【演劇観てきた感想】アガリスクエンターテイメント『なかなか失われない30年』

アイキャッチ画像 演劇

フライヤー画像

出典:アガリスクエンターテイメント http://www.agarisk.com/

おすすめ度:☆☆☆☆☆
公演期間:2024/04/27(土)~2024/05/06(月)
劇場:新宿シアタートップス
脚本・演出:冨坂友
出演:淺越岳人、伊藤圭太、榎並夕起、鹿島ゆきこ、古谷蓮、前田友里子、矢吹ジャンプ、江益凛、兼行凜、菊池泰生、北川竜二、斉藤コータ、雛形羽衣、山下雷舞

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あらすじ

いいから立ち退いて!?
1994年4月30日、
新宿区歌舞伎町のカワダビル4Fにある闇金業者のオフィスでは、売上金を紛失した従業員が穴埋めのため奔走していた。

2004年4月30日、
新宿区歌舞伎町のカワダビル4Fにある風俗店の待機部屋では、女性達が「絶対に接客したくない人物」を押し付け合う会議をしていた。

2014年4月30日、
新宿区歌舞伎町のカワダビル4Fにある小劇場の楽屋では、痴情のもつれで出演者が多数降板した中、残った者達が上演を強行していた。

2024年4月30日、
新宿区歌舞伎町のカワダビル4Fにある劇場跡地を片付けているビルオーナーの目の前に、全ての時代が同時に現れた。

アガリスクエンターテイメントの第31回公演は、移り変わりの激しい新宿の雑居ビルを舞台に、平成から令和のさまざまな場面を一部屋にムリヤリ押し込んで総括する、時間混在コメディ。

出典:アガリスクエンターテイメント http://www.agarisk.com/
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作品の感想

注意

あくまでも個人の感想、若干ネタバレを含むため閲覧注意

演出・脚本:☆☆☆☆☆

物語は、相続した雑居ビルを売却することになり、買取業者が内見に来る前の最後の片づけをしているシーンから始まる。フライヤーからも分かるように舞台は、2023年6月に閉館した新宿シアターミラクルをオマージュした雑居ビルの4階。アガリスクが、かつて”ホームグラウンド”と言っていた”あの場所”である。そして、自分にとっても2013年に再演された『ナイゲン』と出逢い、アガリスクにどハマりし、以降新宿コントレックス含め、参戦可能な作品を追い続けた”始まりの地”でもある。自分よりもっと古いアガリスクのオールドファン含め全員が舞台設定だけで胸熱になるように仕組まれている。

オープニングで状況の軽い共有がなされたのち、公開されているネタバレであり、誰が観てもそのキッカケであろう”時間混在”の始まりである暗転があるのだが、これが兎に角凄い。何となく”ああこうやったんだろうな”という想像は後になってつく(そして最後に答え合わせもしてくれる)のだが、パッと舞台照明がついた際に飛び込んでくる光景は圧巻の一言。見事過ぎる場転で、これだけでチケット代がペイされるほどに鮮やかだった。小劇場のセットチェンジで息を吞んだのは本当に何年振りなんだろうというレベルである。

そして、本題のコメディだが、流石のアガリスクエンターテイメントで、随所で笑わせてくれる。タイムリープものの定番な部分はあるが、時間軸のズレを利用した細かい演出やスマホ(ケータイ)の進化をたどる表現、異様にマニアックなタイムリープ解説など、20代の観客層でもついていけるように巧く捌いており(言わずもがなだが30代40代はリアルタイムな事象満載で大爆笑である)初日ということもあり(アガリスクの初日は”分かっている客”ばかりなので笑いが異常に”喰い気味”に発生する。これはこれで非常に楽しい)会場は、信じられないほどに笑いで揺れる(熱気が凄い)。そして、ラスト、落ち着いて観ていればレトリックとしては古典なので”読める”はずなのに、気付かせない、全くもって不意打ちの華麗なる伏線回収でズバッと終演…お見事。

終始、いつものアガリスクであった。国府台シリーズではなく『時をかける稽古場』、『出会わなければよかったふたり』に連なるタイムリープもので認識とか時間の”ズレ”を笑いに変える巧さが突出している。そして、ほんの少しだけいつものアガリスク過ぎるほどにアガリスクだった。テレビでの活躍を目にするようになり、いよいよ7月には「主催:フジテレビ」で大劇場の三越劇場(定員500オーバー)に進出である。もう、往時の東京サンシャインボーイズじゃん、ってなる。ここに来てこんな総括するみたいな作品をやられると、なんかシアターミラクルへのお別れではなくて、小劇場そのものにお別れを言われたような気分になってしまって、帰り道ちょっと切なくなってしまった。(笑い過ぎの反動)

俳優:☆☆☆☆☆

淺越岳人

この人が出ていないとアガリスクじゃないよね。ってなる。ホワイドボードに極太ペンでなんか書き始めようとしただけで会場が湧くのはこの人か厚切りジェイソンか故ケーシー高峰ぐらいだろう。

鹿島ゆきこ

一番じゃないけど絶対にいつも真ん中より上にいる絶妙な存在感の彼女。今作でも目立たないけど存在感が凄い。彼女がいないと2004年組にリアルな平成中期の風が吹かない。小柄なんだけど姿勢が無茶苦茶良くて舞台捌きが華麗。

山下雷舞

今作では一番オイシイのは彼なのではないかと思ってしまう。容姿からしても設定的にもキワキワのキワのキャラクターなのに、作中では相対的に”まとも”に観えてしまうというのが面白い。親分の大黒(北川竜二)とのズレを何とか合わせようとする掛け合いには笑った。絶対的な”ご主人様”がいると映えるタイプなのかもしれないw

江益凛

『令和5年の廃刀令』に続いて今作も”とあるきっかけ”から超絶やさぐれ魔人になってしまう大島晶を熱演。アガリスクの常連となり、徐々に扱いが”飛び道具”と化してきた感じがある(斉藤コータの扱いに近しい)が、並みいる猛者の中でもきっちり仕事をする実力派俳優である。

伊藤圭太

2時間出ずっぱりであり、本作品の主役であり”狂言回し”である。初日の舞台では、ダイビングキャッチを披露してくれている。が、”あれ”は危ないのでくれぐれもご自愛いただきたい。最後の明転の後ろ姿が格好いい。

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まとめ

面白過ぎて逆にもう小劇場では演ってくれないんじゃないのか?と不安になるほどであった。アガリスクの更なる飛躍に期待しつつも、数年後チケット取れなくなりそうで複雑な気持ちになる。推しは推せるときに推せ、である。

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