出典:Mrs.fictions 公式サイト http://www.mrsfictions.com/index.html
おすすめ度:☆☆☆☆✬
劇場:こまばアゴラ劇場
公演期間:2022/05/11 (水) ~ 2022/05/23 (月)
脚本・演出:中嶋康太
出演:今村圭佑、岡野康弘、ぐんぴぃ、永田佑衣、前田悠雅
あらすじ
20XX年、TOKYO。世はまさに空前の落語ブーム。かつて都内に二つしかなかった落語協会の数は今や百を超え、一億総落語家時代を迎えようとするその影で、一人の師匠が自身の噺家人生にひっそりと幕を下ろそうとしていた……。
出典:Mrs.fictions 公式サイト http://www.mrsfictions.com/index.html
もうなにもかも冬の時代にMrs.fictionsが送る、高座の上の人生讃歌。
作品の感想
あくまでも個人の感想。ネタバレありのため閲覧注意。
演出・脚本:☆☆☆☆☆
Mrs.fictionsらしい優しい雰囲気と笑いが上手く融合したテキストを俳優の圧倒的なパフォーマンスで仕上げている。
以下若干のネタバレあり。本作は是非劇場で観て欲しいのでネタバレは控え気味。
物語は、主人公の花柄花壇(岡野康弘)のモノローグかと思われる落語のまくらのような始まり方でスタートする。客電を落とさない状態で話始め、徐々に客電が落いていくのだがこのタイミングが非常に良くて岡野康弘の噺家ぶりの素晴らしさと相まってスッと入っていけた。
ストーリーとしては、花柄花壇と花柄プラン太(ぐんぴぃ)との掛け合いで時代背景や舞台設定を客席に浸透させていくのだがこれが面白い。時代は、電脳対決ブームでチェスや囲碁将棋のようにAIと人間との対決が続いているなかで、とうとう自然言語処理の分野でもある落語において大名人である花壇が電脳対決に挑む。というものなのだが、多くの小ネタが挟まっていて笑いながら世界観を理解。
対決の結果、花壇は完敗(その負けっぷりも凄いのだがネタバレを控える)。弟子たちにも見放され噺家としての地位も地に落ちるのだが、却って落語はAIという新たな表現手段によって爆発的な人気を博す。花壇を筆頭にリアルな噺家には居場所がなくなり、失意の花壇は半ば自暴自棄な生活に…
そんな花壇のもとを偶然に訪れた鉢(今村圭佑)と苗(永田佑衣)との出会いを切っ掛けに、花壇は改めて花柄一門の再興を目指し、橋の下で出会ったストリートチルドレンの燐(前田悠雅)を引き取り、鉢・苗・燐を新たな弟子として新たな一門としての活動を始める…(この3人のキャラ設定がこれまたフィクションズ的なので是非現地で観て欲しい)
80分ほどの上演時間で無茶苦茶笑わされながらも終盤”お後がよろしいようで”で泣いてしまう。好きなことをやるのに理由はない、ただ好きだからやるんだというMrs.fictionsの情熱のようなものに感情が大きく動かされた。
俳優:☆☆☆☆★
岡野康弘
本職の噺家かよ、と思うような落語の上手さ。芸達者。序盤出演者が出揃うまでの展開をほぼほぼ一人で担って劇場に笑いの渦を生み出すし、ラストはユーモラスな感じからグッとくるセリフを吐く。凄いパフォーマンスを観せてもらった。
今村圭佑
ずるい。Mrs.fictions的な登場シーンは爆笑した。ただ、今村圭佑の凄いところは、それを出オチで終わらせないところ。そのキャラクターのまま人柄の良さが滲み出る演技をするからギャップが凄い。コロナだから”終わりの会”がなかったが、是非やって欲しかった。
前田悠雅
Mrs.fictionsは、(意図的にそうしていると思うのだが)過去にもどういったご縁で?というような美人をキャスティングしてくるのだが、今作もそれに当てはまる。結構難しい役柄をこなしていて感心。劇団4ドル50セントって”そういう劇団”なのね。と帰り道にグーグル先生に教えてもらった。
まとめ
Mrs.fictionsは『お父さんは若年性健忘症』を筆頭に短篇巧者のイメージだが『サヨナラ サイキック オーケストラ』、『伯爵のおるすばん』など中長編も巧いことを再認識。今作は誰が観ても楽しめる。是非とも劇場で観たい作品。
チケット予約ページ
出典:Mrs.fictions 公式サイト http://www.mrsfictions.com/index.html
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